イラストのようにスマホやガラケイを別にしていた訳ではなく、今考えてみても何で倒れ込んだかは分からない。
でも、見事にバタリと倒れ、横断歩道の白い線が目の前へ迫ってきた。
横を見ると、クルマがブレーキをかけ、フロントガラス越しにこちらを見て、少し心配そうな表情を。
何とも情けない気持になり、老いたことを実感し、その時の一コマを詠んだのがこの一首である。
以後はほんの少しの凸凹も気を付けるようにしている。
山口和雄の短歌集
似つかわぬ名を戴きし犬ふぐり可愛き花がふぐりは哀れ
梅が散り桜が散って桃が咲く気候狂って花まで狂う
宇宙論読めば読むほど視界ゼロ虚無から生まれ虚無へと消える
広州とスカイプ通し初孫(ういまご)の笑う姿に機上の人に
現金を出して怪訝な顔されるキャッシュ使わぬ中国社会
金ピカの超高層のビルが建つさすが中国わびさび無縁
歯周病一本二本抜けてゆき総入れ歯への悪夢がよぎる
田植機が羽を広げて道占拠のろのろ進みいらいらつのる
(2018年6月24日朝日歌壇掲載)
がむしゃらに昭和平成生きぬけど古希を迎えて迷宮を行く
ボケないで心配そうに妻叫ぶ転がり落ちる老いの坂道 続きを読む »